沖縄の街を車で走っていると、バスの後部の広告にふと目を奪われる。
全身ずぶ濡れになった、あの人。
沖縄に住んでいる人なら、一度は見たことがあるかもしれない。
SNSでは、ウォーターサーバーを抱えて歩く姿もよく目にする。
一度見たら忘れない。そんな強烈な印象を残す広告だった。
2026年6月。
空間プロデューサーの丸山華子さんのご紹介で入会した、守成クラブ浦添会場。|
その例会を撮らせていただくことになった。
せっかくだからと、例会だけでなく、世話人の皆さんが準備をするところからドキュメンタリータッチで撮影させていただいた。
その時だった。
ファインダー越しに、真剣な表情で会場準備をしている一人の男性が目に留まった。
「あれ、この人どこかで見たことがある」
そう思った瞬間、街で何度も見かけていた広告の人物だと気付いた。
水屋の一平さんこと、久保田一平さんだった。
例会後、一平さんから撮影のご相談をいただいた。
ご依頼は、社員の皆さんの集合写真。
そこで私は一つだけお願いをした。
「撮影の前に、皆さんのお話を聞かせていただけませんか」
写真は、その人を知る前と知った後では、撮り手の没頭具合がまったく違う。
どんな人生を歩んできたのか。どんな出来事があって、今ここに立っているのか。
それを知ることで、その人の表情だけではなく、その人が纏っている空気まで見えてくる気がしている。
だから私は、撮影の前に話を聞く。
今回も、一平さん、そして社員の皆さんへのインタビューから始まった。
一平さんは、もともと東京でコピー機の営業をしていた。
沖縄へ戻るきっかけになったのは、お母様のご病気だったという。
帰郷してご両親が続けてこられた仕事に関わるようになり、
その後、自分たちで販売し、設置し、メンテナンスまでを行う会社として
「水屋の一平さん」を立ち上げた。
話を聞いていて印象的だったのは、一平さんが商品の性能を語る前に、
まず「人」の話をすることだった。
ウォーターサーバーは、一度設置して終わる仕事ではない。
一年に一度メンテナンスに伺い、その先も何年、何十年と付き合いが続いていく。
独身だったお客様に恋人ができる。結婚する。子
|どもが生まれる。その子どもが少しずつ大きくなっていく。
そんな人生の変化を、仕事を通して見守ってきたという。
「十年以上のお付き合いになるお客様もたくさんいるんです」
その言葉を聞いた時、私は、
この会社はウォーターサーバーを届けているというより、
暮らしの中に入り、暮らしに寄り添い続けている会社なのだと感じた。
そして、一平さんが何度も口にしていた言葉がある。
「家に入る仕事だから」
設置も、メンテナンスも、お客様の家に入って行う。
だから、お客様はサービスだけを見ているのではない。
「どんな人が来るんだろう」
そこにも安心を求めている。
だから今回、一平さんが社員の皆さんの写真をホームページに載せたいと考えた理由も、そこにあった。
「こういう人が来てくれるなら安心」
そう思ってもらいたい。
その想いが、とても自然に伝わってきた。
一平さんが目指しているのは、
親から子へと受け継がれるような会社だという。
親の代で使っていたウォーターサーバーを、子どもが家庭を持った時にも選んでもらえる。
そんな関係を、お客様と築いていきたい。
話を聞く中で、一平さんが語ったある言葉が、深く心に刺さった。
「もちろん、お客様は大切です。
でも、そのお客様を大切にしてくれる社員を、私はもっと大切にしたいんです」
お客様を大切にする会社は多い。
けれど、その前に「社員を大切にする」という考え方が、こ
の会社の文化をつくっているのかもしれない。
このあと社員の皆さんに話を聞いて、
その直感はさらに確信へと変わっていった。

社員の皆さんにも、それぞれの物語があった。
久保田梨奈さんは一平さんのお姉様。
もともとご両親の会社を手伝っていた。
お母様のご病気をきっかけに、それまであまり話すことのなかった弟・一平さんと、
これからのことを話す時間が増えたという。
その中で、お互いが思っていることを初めて言葉にした。
「思っていることが一緒だった」
会社を大きくしていきたい。
社会に貢献できる会社にしたい。
そして、その先には子どもたちへ何かを残していけるような存在でありたい。
思いを共有したことで、
「一緒に協力してやっていこう」と自然に決まった。
今では、この仕事のやりがいは「お客様の人生を見守れること」だと話してくれた。
独身だったお客様が結婚し、子どもが生まれ、その子がまた大きくなっていく。
「お客様の人生が見られるんです」
その言葉を聞いた時、一平さんが話していた「長い付き合い」という言葉が、さらに深く心に残った。

久保田大喜さんは、一平さんのいとこだ。
幼い頃から、お互いの親が一緒に仕事をする姿を見て育ってきた。
お母様のご病気をきっかけに、一平さんから会社を立ち上げる話を聞いた。
「一平が本気でやるなら、自分も手伝う」
そう思ったことが、この会社へ加わるきっかけになった。
今では現場に立ち、お客様と向き合う毎日を送っている。
二人の話を聞いていると、この会社は「人が集められた会社」というより、
「思いに人が集まってきた会社」なのだと感じた。

平識伶亜さんは、一平さんの奥様の弟さん。
以前も現場仕事をしていたが、
一平さんから声を掛けられ、この会社へ入った。
現在は、設置工事を担当している。
設置が終わったあと、自分で仕上げた配線を見返して
「頑張ったな」と思える瞬間があるという。
配線は、できるだけ目立たないように。
それは一平さんから、いつも言われていることだそうだ。
設置する前には、
お客様と相談しながら
「こちらを通してもいいですか」と確認し、一緒に場所を決めていく。
お客様が毎日使うものだからこそ、小さなところまで丁寧に仕上げる。
作業中、お客様が扇風機を向けてくれたり、
お茶やお菓子を出してくださることも多いという。
「みんな優しいんです」
その一言が、とても印象に残った。
仕事の話というより、人との関わりの話として語っていたからだ。
この会社では、仕事の先にいる「人」が、
自然と会話の中心にあるように感じた。

辺土名知佳さんは、前の職場を退職することになったタイミングで、
一平さんが「おいで」と声を掛けてくれた。
新しい職場で頑張ろう。
そう思って入社した矢先、妊娠が分かった。
つわりもひどく、「最初から迷惑ばかりかけてしまう」と伝えた時、
一平さんと梨奈さんから返ってきた言葉があった。
「(子どもを産んだら)頑張るでしょ?」
子どもを産んだら、また頑張ればいい。
だから今は安心して休みなさい。
知佳さんは、その言葉に救われたという。
出産と育休を経て職場へ戻り、
今はメンテナンスを担当している。
話を聞いていて印象に残ったのは、お客様への距離感だった。
「片付けなくていいんです」
「そのまま寝ていてもいいくらい」
メンテナンスの日だからといって、お客様に気を遣ってほしくない。
親戚が来るくらいの気持ちで迎えてほしい。
その言葉には、お客様に安心してほしいという気持ちが、そのまま表れていた。

見田佳奈さんは、以前は二つの仕事を掛け持ちしていた。
そんな時、一平さんから
「ここで働いたら?」
と声を掛けられたという。
「一つにできるよ」
その言葉が、この会社へ入るきっかけになった。
今では沖縄各地を回りながら、お客様のもとへ向かう毎日だ。
「あちこち行けるのが楽しい」
糸満から北部まで。仕事を通して沖縄中を走り回る。
そして、お客様から「綺麗にしてくれてありがとう」と言ってもらえることが嬉しいと話してくれた。
最後に、これから利用を考えている方へのメッセージをお願いすると、
少し照れながら笑って答えてくれた。
「綺麗にします。私が」
短い一言だった。
でも、その言葉だけで、人柄は十分伝わってきた。

安慶田円さんは、一平さんのお姉さんの友人で、
この会社では五年目になる。
主な仕事は事務。
現場へ向かうスタッフが気持ちよく仕事へ行けるように、裏方として会社を支えている。
「溜まっていた仕事が全部終わった時、『私ってマジでできるやつ』って思うんです」
そう笑う姿が印象的だった。
電話では、水質について不安を持つお客様から相談を受けることも多いという。
その時に心掛けていることを聞くと、
「一つでも不安を解消して、安心して契約してもらえるように」
と答えてくれた。
これから利用を考えている方へのメッセージをお願いすると、
「スタッフとお客様との距離が近い会社だと思います。
何かあればすぐ駆けつけますし、何でも聞いてください。
安心してご契約ください」
そう真っ直ぐな言葉で締めくくってくれた。

インタビューを終えて感じたのは、
それぞれの話が別々の人生のようでいて、
どこか一本の線でつながっていたということだった。
誰かに助けられた経験。
迷っていた時にかけられた一言。
家族との関係の変化。
お客様との何気ないやりとりの中で生まれた喜び。
それらはすべて、特別な出来事ではなく、
日常の中に静かに積み重なってきたものだった。
そして気づけば、
その一つひとつが
「この仕事を続ける理由」
になっていた。
その流れの中で、一平さんのあの言葉が改めて胸に響いた。
『お客様を本当に大切にできるのは、社員なんです。
だから私は、その社員をもっと大切にしたい』
この言葉は、ただの理念として語られているというよりも、
この会社の現場の空気そのものだったのだ。
誰かが無理をして頑張るのではなく、
誰かに支えられた経験を、そのまま次の誰かへ渡していく。そ
の温かい循環の中に、この会社の姿があった。
もちろん、水屋の一平さんには、商品としての魅力がある。
水へのこだわり。製造から販売、設置、メンテナンスまでを自社で行う体制。
迅速な対応。児童養護施設への支援など、地域への取り組み。
商品やサービスだけを見ても、
十分に選ばれる理由がある会社だと感じた。
それでも、撮影を終えた今、
私の中に一番強く残っているのは、そこではなかった。
一人ひとりの話を聞いていると、不
思議なくらい同じ言葉が何度も出てきたのだ。
「助けてもらった」
「支えてもらった」
「頑張るでしょ」
「みんな優しい」
誰一人として、自分のことだけを話す人はいなかった。
みんなが誰かのことを愛おしそうに話していた。
仲間のこと。
家族のこと。
そして、お客様のこと。
誰かが誰かに救われ、その人が今度はお客様を支えている。
そんな循環が、この会社には確かに流れていた。

私は、人を撮る時、
その人がどんな人生を歩んできたのかを知りたいと思っている。
その人が大切にしているものは何か。
何に悩み、何を守ろうとしているのか。
それを知ると、表情の捉え方が変わるからだ。
今回も、それは同じだった。
撮影の前にみなさんのインタビューをお願いした理由は、そこにある。
写真の綺麗さだけでは伝わらないものがある。
その笑顔の背景にある時間や、人との関係や、積み重ねてきた出来事を知った時、
一枚の写真は少しだけ深くなる。
商品を選ぶ時代から、
「誰から買うか」を選ぶ時代へ。
そんな言葉を耳にすることが増えた。
今回の取材を通して、その言葉をあらためて実感した。
この人なら任せたい。
この人が来てくれるなら安心だ。
この人たちから買いたい。
そんな気持ちは、スペックや価格だけでは生まれない。
人柄や、信頼や、生き方の積み重ねから生まれるものなのだと思う。
この写真から、その空気が少しでも伝わったなら嬉しい。
そして、写真の向こう側にいる一人ひとりの想いまで感じてもらえたなら、
それ以上に嬉しいことはない。


