石川星(イシカワキラリ)さんと最初に会ったのは、とある経営者の集まりだった。
少し話をしたところで、そのときはなんとなく尻切れになったのだけれど、なぜか少し気になった。後日あらためて時間をつくってもらい、今度はゆっくり話をした。
教育のこと、子どものこと、社会のこと、夢のこと。
ひとつの話をしていると、そこから別の話へ飛んでいく。
話題はあちこちに広がっていくのだけれど、不思議と話の中心にあるものはぶれない。
子どもたちに夢を持ってほしい。
いろいろな選択肢を知ってほしい。
そして、優しい社会になってほしい。
そういう話を、星さんは淡々と話す。
声を張って熱く語るわけではない。
それなのに、話していることにはちゃんと熱がある。その姿に、私は純粋さを感じた。
妹のためにつくった塾
星さんが塾を始めたきっかけは、妹だった。
中学3年生だった妹が塾に行きたいと言ったものの、塾には5万円くらいかかる。それを聞いて、
「勉強したいという思いがあるのに、経済的な理由で行けないのってどうなのかな」
と考え、自分で塾をつくった。
ところが、妹はその塾には来なかったらしい。
「最大のオチですよね」
と笑っていた。
妹は別の無料塾に行って、そのまま卒業したそうだ。
思わず笑ってしまう話なのだけれど、私はその話がけっこう好きだった。
最初に思い描いた通りにはならなかった。
でも、それで終わらなかった。
妹のためにつくった塾に妹は来なかったけれど、その出来事が今の活動につながっている。
人生なんて、案外そんなものなのかもしれない。
最初から完璧な答えがあったわけではなくて、目の前で起きたことに対して
「じゃあ、どうする?」
と考えて動いてみる。
その繰り返しの中で、いつの間にか今いる場所にたどり着いている。

夢を持てるということ
星さんと話していて、私が特に引っかかったのが、
「夢を持ってほしい」
という話だった。
夢を持てと言われても、知らないものを夢にはできない。
世の中にどんな仕事があるのか、どんな人がいるのか、どんな生き方があるのか。そういうものに触れる機会がなければ、自分が何をしたいのかを考えること自体が難しい。
だから教育を通して、いろいろな選択肢を知ってほしいという。
私はこの考え方には共感する。
教育というと、知識を身につけることをイメージしやすいけれど、それだけではなく、その知識をもとに自分で考えたり、誰かの立場を想像したり、自分はどう生きたいのかを考えたりするところまで含まれるものだと思っている。
だから、星さんが薬物について話していたときも興味深かった。
「薬物はダメです」と大人が言うだけではなく、実際に薬物によって人生が変わってしまった人の話を聞いたり、同世代の人から「それ、ダサいよ」と言われたり、自分の隣にいる友達が亡くなったら自分はどう思うのかを考えたりする。
そういう経験を通して、自分自身で考えるきっかけをつくりたいという話だった。
教育というものを、知識を与えることだけで終わらせない。
そこに教養や倫理というものまで含めて考えているところに、私は面白さを感じた。
「熱い!!」
星さんは、昔から正義感が強かったらしい。
自分には関係のない喧嘩でも、誰かが揉めていると止めに入ってしまい、その結果、とばっちりを食らうこともあったという。
それを聞いて、「熱いなあ」と私は思った。
私自身はどちらかというと平和主義ではあるが、知らない人同士が喧嘩をしていても、わざわざ自分から入っていくことはない。
そこは私とはかなり違う。
でも、そういうところも含めて、星さんのまっすぐさなのだと思う。
社会に対して、ものすごく怒ることもあるらしい。
ただ、その話をするときも、声を荒らげるわけではなく、いつものように淡々と話す。
その温度差が、なんだか面白かった。
話題は飛ぶ。
話も広がる。
でも、根っこのところにあるものは意外と変わらない。
誰かが困っていることや、誰かが選択肢を持てないことを見過ごしたくない。
自分にできることがあるなら、とりあえずやってみる。
そんな姿勢が、いろいろな話の中から少しずつ見えてきた。

優しい社会になってほしい
星さんと話したあと、私の中に残ったのは
「優しい社会になってほしい」
という言葉だった。
教育格差のことも、子どもたちに夢を持ってほしいという話も、薬物について同世代に伝えたいという話も、社会に対する怒りも、一見すると別々の話に見える。
でも、話を聞いていると、どこかでつながっているように感じる。
誰かが困っているなら、少しでも手を差し伸べられる社会であってほしい。
知らないから諦めるのではなく、知ることで自分の選択肢を増やしてほしい。
そして、自分だけではなく、周りにいる人のことも考えられるような人が増えてほしい。
私自身も、人と人が手を取り合って助け合える世界を目指したいと思っている。
だから、星さんの話を聞いていて共感するところが多かった。
最後に「今、言いたいことはありますか」と聞いたら、星さんは少し考えて、
「頑張れ、日本人ってしか思わないです」
と言った。
経済も厳しいし、会社もいろいろなところが倒産している。
本来なら「頑張ろうぜ」と言えるようなものが見えなくなっていて、夢を持って生きること自体が難しくなっているんじゃないか、という話だった。
「そうだよねー」
と私は思った。
ここまで話を聞いてきたから、それほど意外ではなかった。
子どもたちのことを考えているうちに、その先にある社会のことまで考えてしまう。
星さんの話は、いつもそうやって広がっていく。

そういえば、20歳だった
撮影とインタビューを終えてから、あらためて考えてみると、星さんは20歳だった。
大学生でもある。
話しているときは、ほとんど年齢を意識していなかった。
しっかりしているし、話していることにも軸がある。
ただ、ときどきあどけない笑い方をする。
その瞬間だけ、
「あ、20歳なんだ」
と思う。
でも、今回、私が星さんを撮影したのは、20歳の学生起業家だからではない。
学生だから興味を持ったわけでもない。
最初に会ったときに、なんとなく気になった。
そして、もう一度話してみたら、やっぱり面白かった。
淡々と熱く語る姿に純粋さを感じたし、まっすぐに進もうとする姿勢にも惹かれた。
だから撮りたいと思った。
今回は授業風景を撮ることができなかったので、次は実際に子どもたちと向き合っているところも撮ってみたいと思っている。
そこには、今回話を聞いただけでは見えなかった星さんの表情や空気があるはずだ。
私は、星さんを「こういう人です」と決めて紹介したいわけではない。
まだ私自身、もう少し見てみたいと思っている。
ただ、この記事を読んだ人が「なんか、この人ちょっと気になるな」と思ってくれたら、それで十分だと思う。
その先で、星さん自身の言葉や活動に触れてもらえたらいい。
人を知るきっかけをつくる。
写真と言葉で、そんな出会いの入口をつくれたらと思っている。

取材協力
石川星 (イシカワ キラリ)
「Bridge Academy進学塾」代表
https://www.bridge-academy.website/
Instagram:https://www.instagram.com/kirari_ishikawa/
