諌山幸枝さんから、ホームページに使用する写真の撮影依頼をいただいた。
現在のホームページに使っている写真が古くなってきたので、プロフィール写真やトップページのキービジュアルを新しくしたいという。
幸枝さんは、経理や事務、SNSの運用など、企業や個人事業主のさまざまな業務をサポートする会社を経営している。
約20名のスタッフとともに、全国のクライアントの仕事を支えているという。
打ち合わせで話を聞いていると、どうやら一般的な事務代行とは少し違うらしい。
経理を頼まれれば経理をするし、SNSの投稿や資料作成を頼まれることもある。
ときには社員からの相談を受けたり、社長と一緒に仕事の進め方を考えたりもする。
「何でも相談できる」
というのが、幸枝さんの仕事の特徴なのだという。
ただ、これを写真で表現するとなると、なかなか難しい。
パソコンに向かって仕事をしている姿を撮ることはできる。
でも、それでは幸枝さんの仕事の一部分しか伝わらない。
何より、幸枝さんが大切にしているのは、作業そのものよりも、クライアントとの関係性にあるように感じた。
だったら、実際にクライアントと話しているところを撮影したらどうだろう。
そんな話から、今回の撮影は対談とインタビューの二本立てで行うことになった。
対談相手として協力してくれたのは、まいまいシーサー株式会社の加藤可奈子さん。
可奈子さんは、私自身もお付き合いがあり、とても尊敬している経営者の一人だ。
先日、まいまいシーサーの10周年イベントを撮影させてもらったこともある。
そんな可奈子さんが、幸枝さんのクライアントだという。
実際に仕事を依頼している人だからこそ、幸枝さんがどんな仕事をしていて、どんなふうに人と関わっているのかを聞くことができる。
そして何より、二人の関係性そのものが写真に写るはずだと思った。
こうして、可奈子さんと幸枝さんの対談を撮影することになった。
「めっちゃ縁の下の力持ち」
「めっちゃ縁の下の力持ち」
幸枝さんがどんな存在なのかを尋ねると、可奈子さんから真っ先に出てきたのがこの言葉だった。
ただ、話を聞いていると、どうやら普通の「縁の下の力持ち」ではないらしい。
「自分からガンガン動いてくれて、こういうふうにしていったらどうですかって提案してくれる」
頼まれたことをこなすだけではなく、相手の状況を見ながら、必要だと思ったことを自分から提案していく。
ときには「もう明日行きますね」と、自ら動いてしまうこともあるという。
可奈子さんは、そんな幸枝さんを「受け身じゃない」と表現していた。
二人の仕事の始まりは、契約書の作成だった。
もともと二人は、あるコミュニティを通じてつながっていたものの、直接会ったことはなかったという。
その後、可奈子さんが契約書を作れずに困っていると聞いた幸枝さんが、
「たぶん作れると思います」
と引き受けたのが、仕事として関わるきっかけだった。
そこから一つ、また一つと依頼が増え、今ではまいまいシーサーの事務局を裏側から支える存在になっている。
税理士と社内のスタッフとの間に入って仕事を整理したり、レシートの管理を引き受けたり。
単に作業を代行するのではなく、会社全体の仕事がうまく進むように考えてくれる。
「一緒に伴走してくれるっていうイメージがすごく強い」
可奈子さんの話を聞いていると、幸枝さんが提供しているものは、単なる事務作業の代行ではないことがわかってくる。

「お金は後からついてくる」
幸枝さんに、仕事をするうえで大切にしていることを聞いてみた。
「お金は後からついてくると思っていて」
少し心配性なところがあるという幸枝さんは、仕事を引き受けるたびに
「これだけお金をいただいて、それ以上にお役に立てているだろうか」
と考えるのだという。
だから、やりすぎるくらいが好きらしい。
「やりすぎて、値上げするよって向こうに言ってもらえるぐらいの方が、私は落ち着く」
なかなか面白い考え方だと思った。
普通は、できるだけ高く仕事を受けたいと考えるものだろう。
でも幸枝さんは、まず相手の期待を超えることを大切にしている。
「人の想像を超えた時にしか、感動って生まれないと思っていて」
その言葉には、幸枝さんの仕事に対する考え方がよく表れているように感じた。
そして、実際にそれを象徴する出来事があったという。
まいまいシーサーとの仕事が始まった頃、幸枝さんが受け取っていた報酬は、可奈子さんが驚くほど安い金額だったそうだ。
それでも幸枝さんは、自分から仕事を見つけ、積極的に関わり続けた。
すると、あるときまいまいシーサーの社員から、こんな声が上がった。
「もうちょっと払ってあげないと、かわいそうだと思う」
実際に幸枝さんの仕事ぶりを見ていた社員たちが、そう言い始めたのだという。
その話を聞いて、幸枝さんは泣いたそうだ。
自分がやってきたことが、相手の会社の人たちにちゃんと届いていた。
そのことが、何より嬉しかったのではないだろうか。
可奈子さんも、その出来事について
「心で先につながれるぐらい、信頼がちゃんと獲得できていた」
と話していた。
仕事の価値は、作業の量や時間だけでは測れない。
どんな思いで、どんなふうに相手と関わってきたのか。
その積み重ねが、信頼という形になって返ってくることもあるのだと思う。

強みを活かして、弱みは頼る
幸枝さんの会社には、
「強みを活かして、弱みは頼る」
という行動指針がある。
私は、この言葉がとても印象に残った。
自分が得意なことは、自分でやればいい。
でも、苦手なことまで無理に抱え込む必要はない。
幸枝さんは、それぞれが得意なことを持ち寄って仕事をすることを大切にしているという。
「みんなが強いところだけを活かして、みんなで一つの人になるみたいな感じ」
実際、幸枝さんの会社には全国に約20名のスタッフがいて、それぞれの得意分野を活かしながら仕事をしている。
経理が得意な人もいれば、SNSやデザインが得意な人もいる。
誰か一人がすべてをこなすのではなく、チームとしてクライアントを支える仕組みだ。
そして、この考え方は、クライアント側にも変化を生んでいる。
可奈子さんは、幸枝さんと仕事をするようになって、会社の仕事の任せ方が大きく変わったと話していた。
それまでは、社内の仕事は社内でやらなければいけないと思っていたという。
でも、幸枝さんに少しずつ仕事を任せるうちに、
「これも外に出していいよね」
「これは幸枝さんの方が得意だよね」
と考えるようになった。
「苦手なことをやらせなくてよくなりましたよ、みんなの」
可奈子さんは、そう話していた。
社員が苦手な仕事を無理に覚えるよりも、それを得意とする人に任せた方がいい。
その分、社員は自分の強みを活かせる仕事に集中できる。
考えてみれば、とてもシンプルなことだ。
けれど、実際には自分でやらなければいけないと思い込んでいる仕事が、案外たくさんあるのかもしれない。

一人社長には、自分のことに集中してほしい
対談の後、幸枝さんに改めて話を聞いた。
特に印象に残ったのが、一人社長に対する思いだった。
「やらんでいいことやって、止まってたらもったいないやんって思うので」
幸枝さんは、一人で会社を経営している人ほど、自分の強みを活かすことに集中してほしいと話す。
会社を立ち上げる人には、きっと何かやりたいことがある。
実現したい目標があり、その人だからこそできる仕事があるはずだ。
でも、一人で仕事をしていると、どうしても何でも自分でやってしまう。
請求書を作ったり、経理をしたり、SNSを更新したり。
もちろん、それらも必要な仕事だ。
ただ、その仕事に追われることで、本当にやりたいことができなくなってしまうのは、もったいない。
誰かに頼めばお金がかかる。でも、その分、自分の時間が生まれる。
可奈子さんも、同じことを話していた。
目先のお金が減ることばかり気にしてしまうけれど、仕事を任せることで生まれた時間を、自分にしかできない仕事に使えるようになる。
それは、会社を成長させるための大切な選択でもある。
幸枝さんの会社では、時間単位ではなく、仕事単位で料金を設定しているという。
「この仕事なら5,000円でできます」
「これくらいなら1,000円でできます」
そんなふうに、小さな仕事からでも頼めるようにしている。
最初から大きな契約をする必要はないし、毎月依頼する必要もない。
「1回でいいから試してほしい」
幸枝さんは、そう話していた。
一度頼んでみて、自分でやった方がいいと思えば、それでもいい。
でも、誰かに任せることで、自分の仕事や生活がどんなふうに変わるのか。その可能性を知ってほしいのだという。

自由に生きられる人を増やしたい
幸枝さんの仕事には、もう一つ大切な思いがある。
それは、働く人たちの可能性を広げることだ。
もともと幸枝さん自身、大学生協で約15年間働いていたという。
店舗運営や販売促進、経理など、さまざまな仕事を経験し、その後、副業として周囲の人から頼まれた仕事を引き受けるようになった。
最初から今のような事業を考えていたわけではない。
困っている人がいれば、「それなら私ができますよ」と声をかける。
そんな小さな仕事の積み重ねが、今の会社につながっている。
だからこそ、今度は自分が、誰かの可能性を広げる側になりたいのだと思う。
自分の強みを活かして、自由に働き、生きられる人を増やしたい。
幸枝さんの話からは、そんな思いが伝わってきた。
幸枝さんの会社では、全国のスタッフがオンラインで仕事をしている。
子育てをしている人もいれば、別の仕事をしながら働いている人もいる。
それぞれの生活に合わせて、自分の得意なことを活かせる働き方をつくっているという。
幸枝さんが話していたのは、これまで「自分には何もできない」と思っていた人が、
「これなら自分にもできる」
と気づくことの大切さだった。
自分の得意なことが、誰かの役に立つ。
その仕事で収入を得られるようになり、自信にもつながっていく。
そして、その人が誰かの仕事を支えることで、今度は支えられた人が、自分のやりたいことに集中できるようになる。
幸枝さんは、そんな循環をつくりたいのだという。

小さな仕事が、社会を変えていく
「私たちができることは、めちゃめちゃ小さいけど」
幸枝さんは、そう話していた。
自分たちが引き受けるのは、経理や事務、資料作成といった、一つひとつは小さな仕事かもしれない。
でも、その仕事を誰かに任せられるようになった社長が、自分のやりたいことに集中できたらどうだろう。
その会社が成長し、そこで働く人が増え、また新しい仕事が生まれていく。
「その一人社長が楽になって、そしたら一人社長がきっといいことをやってくれるはずなので、そしたら勝手に社会が良くなる」
幸枝さんは、そんな未来を思い描いている。
自分たちが直接、社会を大きく変えるわけではない。
でも、誰かの仕事を支えることで、その人が持っている可能性を広げることはできる。
そして、その人がまた別の誰かの力になる。
そうやって、いい循環が生まれていく。
話を聞いていて、幸枝さんがやっている仕事の本質は、そこにあるように感じた。

かなり積極的な、縁の下の力持ち
今回、幸枝さんと可奈子さんの対談を撮影していて、改めて面白いと思ったことがある。
それは、幸枝さん自身が話す仕事への思いと、可奈子さんが語る幸枝さんの仕事ぶりが、自然と重なっていたことだ。
「人の想像を超えた時にしか、感動は生まれない」
「強みを活かして、弱みは頼る」
「一人社長には、自分のことに集中してほしい」
幸枝さんが大切にしていることは、実際にクライアントとの関係の中で形になっていた。
そして、そのことを一番よく知っているのは、幸枝さん自身ではなく、仕事を依頼している可奈子さんなのかもしれない。
今回、可奈子さんに対談相手をお願いできたことは、本当によかったと思う。
プロフィール写真というと、どうしてもその人一人を撮影することを考えがちだ。
でも、その人がどんな人なのかは、誰かと関わっているときにこそ見えてくることがある。
何を話し、何を考え、相手の言葉にどう反応するのか。
そんな瞬間に、その人らしさが表れる。
今回も、二人の会話を通して、幸枝さんの仕事への思いや人柄が少しずつ見えてきた。
可奈子さんが最初に言った「縁の下の力持ち」という言葉。
確かに、幸枝さんにはその言葉がよく似合う。
ただ、誰かに言われるのを待っているわけではない。
自分から声をかけ、仕事を見つけ、相手のために動いていく。
かなり積極的な、縁の下の力持ちなのである。

諌山幸枝
株式会社 HappyBrunch代表取締役
https://happy-brunch.com/
https://www.instagram.com/yukkie_happybrunch/
